駆除

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俺の居た時代の人間が、人種開発なんて事をしていたとは初耳だ。 俺の疑問にミキは答える。 「かつて人間は、世にもおぞましい悪の所業を繰り返してきた」 「悪の所業?」 「人間の上位種と成り得る、"新人種"を自ら造り出そうとしたのだ その為に 知能を発達させる研究 身体能力を向上させる研究 など積み重なる実験を行ってきた まぁ、安全性が確認されるまで、実験自体は余の先祖達で行ってきたのだがな 実に人間らしい、穢れた考えだ」 「で? その結果、生まれたのが "叡人"と"獣人"だと?」 「少し違うな」 あれ? 「違うって?」 「かつての人間共は、結局新人種を生み出す事ができなかった」 「何? さっき言っていた事と違うじゃねぇか」 「正確にはな しかし、人種そのものは生み出せなかったが、実験の末に新人種の礎とも呼べる原理は導き出していた」 「新人種の元は生み出したって訳か じゃあ、"叡人"と"獣人"はどうやって生まれた?」 「人種開発が叶わぬまま程なくして、ニルヴァーナの粛正によりかつての時代は終焉を迎える その際、ニルヴァーナによって余波が世界にもたらされた」 ん? それって、以前ミリアに聞いた事がある。 かつての戦いでニルヴァーナから放たれた余波を浴びて、この世界の住人は魔力を宿したと。 「まさか……」 「そうだ 人間が導き出した新人種の原理に、ニルヴァーナの余波が加わった事で、"叡人"及び"獣人"が生まれた それから幾星霜の時が経ち、世界は今の様に造り替えられたのだ」 なるほど。 確かに、魔力云々の力が加わったとしたら、あんなファンタジーな人種が生まれた事には納得できる。 人間が人種開発をしていたという事実は、俺は知らないが……。 まぁ、都市伝説的に信憑性が薄いが、どこかの地域ではそんな研究をしていても不思議はないな。 それに、ミキに宿っている実験用ネズミの記憶が、なによりの証拠とも言える。 つまり、これがミキの "人間は与えた側の立場" だと言う理由か。
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