駆除

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なるほど。 ミキが俺を殺したがっている動機は理解できた。 今までの話を整理してみよう。 ミキは"獣の王"になる為の"玉璽"――"統導"を宿した時。 それと同時に、太古の記憶も宿している。 その記憶は、俺が居た時代の、とある生物によるもの。 その生物とは、ネズミだった。 太古の人間が新人種の開発を企て、その研究材料として酷使され続けた、実験用のネズミ。 ミキはその記憶を得た事により、人間に対する嫌悪を抱く。 そして、その記憶を宿した意味を自己解釈し、人間を滅ぼす事を決意した。 その手始めに、ラロの民の忠誠心を利用し、太古の遺産を復活させる様にそそのかす。 結果、太古の遺産を危険視しているニルヴァーナによって、ラロの民は住居諸共滅ぼされる。 が、ニルヴァーナの成せる事はここまで。 ニルヴァーナは太古から1000年以上の時を経て、老化し弱体化。 残す個体も、1体だけとなり、もはや風前の灯火だ。 そして、かつてニルヴァーナが粛正した事をミキは代替わりする。 ミキがここ最近、ルペス村や、ニルバニアの街郊外にまで、危険性の高い魔物をけしかけていたのはその為だ。 そして、それに関わってしまった俺。 ミキは俺の存在を知る。 太古から来た、"本当の意味での人間"だと。 ミキの駆逐対象が、人類から、俺個人に移った瞬間だ。 やれやれ。 嫌な奴に目を付けられたものだ。 ミキは俺に語り掛けた。 「そろそろ理解できたのではないか? 余が汝を殺す理由を」 「まぁな」 「では、死ね あの世で、汝が犯した"人間"という罪を、せいぜい償うがいい」 「おう 色々、話してくれてありがとな」 俺は素直に礼を言った。 知りたい事は十分過ぎる程、聞けたからな。 王様に対するせめてもの敬意だ。 俺の礼に、ミキは少し戸惑っていた。 「む?」 俺は構わず続ける。 「だがな テメェ如きに殺される気は毛頭ない」 言って俺は、握っていた拳銃の照準をミキに合わせる。 そして、引き金を引いた。 躊躇など微塵もなかった。
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