駆除

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ん? ミキの発したその名前に、俺は心当たりがあった。 粗暴な見た目に、乱暴な言葉遣い。 その様子から、周囲の評価はあまり良くなかった。 だが、実は努力家で、自らの強さを高める事に関しては妥協を許さない。 頭が悪く、馬鹿力だけが取り柄の典型的な脳筋タイプの獣人。 かつて俺に決闘を申し込み、そして敗北。 その末、俺達の仲間として加わった男。 "ガルム・オーガスト"。 ミキが呼んだのは、アイツと同じ姓だった。 「まさか……」 俺がとある予感を抱いていると。 「クッハハハ! 恐れおののくがいい! コイツにかかれば、汝等など虫けらも同然だ!」 ミキは狂った様に笑っていた。 先程の落ち着き具合は、どこへやら。 足の痛みで理性が崩壊仕掛けているのか? 流石、最弱の魔物。 まぁ、死んでないだけ、ミキは優れている方か。 などと、思っていたら……。 ミキの背後にある洞穴から、ぬうっと何かが出てきた。 デカいな。 体長2mは余裕にある。 全身を覆う黒い毛に、人型の体格ながらもその随所に獣の特徴が見て取れる。 間違いない。 俺は確信した。 と、同時にミリアもそれの正体を理解したみたいだ。 「まさか…… "獣化人"だと……!?」 ミリアの声は震えていた。 何事にも、物怖じしないミリアが珍しいな。 獣化人の恐ろしさを、知っているみたいだ。 そして、一つ付き加えるなら、俺はこの"獣化人"の正体を知っている。 "オーガスト"。 この姓がなによりの証拠だ。 この"獣化人"は、ガルムの父親だ。
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