駆除

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オーガスト……。 ウルバキアに向かう道中に、出くわした個体で間違いないな。 オーガストの瞳の色は、先程ミキに操られていた灰子同様に、白濁していた。 やはり、ミキに操られていたのか……。 「グゥヴゥゥ……」 オーガストは、口から涎を垂らしながら唸っていた。 もはや、理性の欠片もない。 そんなオーガストの姿を見て、ミリアはミキを訴えた。 「ミキ……! 何故、"人"を配下にした!? 卑怯だぞ!!」 ん? あぁ、なるほど。 ミリアは、獣化人を"人"だと捉えたのか。 まぁ、元が獣人だからな。 オーガストの人権を尊重した訳だ。 ミリアからすると、人を殺める訳にはいかないのだろう。 その一方で、ミキからするとオーガストを操って俺達を殺す事ができる。 つまり。 ミリアは、ミキに人質をとられている状況。 そして、ミキはその人質を俺達に襲わす気でいる。 うーん……。 立場的には、俺達の方が分が悪いか。 ミリアの訴えに、ミキは嘲笑い、答えた。 「卑怯? ククク…… オーガストは身も心も、獣のそれだ 忠実なる余の僕(しもべ)である」 「詭弁を抜かすでない! 早く、その者を開放せよ! さもなくば……」 「さもなくば、どうするのだ? 余を殺すか? やってみよ、身の程知らずの愚か者どもよ! 汝等に何ができる? オーガストの戦闘力を甘く見るなよ こやつは、あの黒獄獣を倒した事もあるのだぞ!」 「黒獄獣を!? くっ……」 あらら……。 ミリアの奴、言い負かされちゃったよ。 っていうか、その黒獄獣を強さの兼ね合いに出す風潮なんなの? 黒獄獣って、いうほど強いか? 何度か遭遇した事あるが、対して苦戦した覚えないぞ? 俺がそんな事を考えていた時。 「カズ…… 相手が獣化人では、勝ち目は皆無だ 私が少しでも時間を稼ぐ その内にお前はリコを連れて逃げるのだ」 ミリアがあらぬ覚悟を決めていた。 おいおい。 自己犠牲の精神は傷み入るが、そこまで気負う程、事態は深刻じゃないだろ。 俺は、ミリアの言い付けを無視し一歩前へ踏み出した。 「カ、カズ!?」 驚くミリアに、俺は冷静に述べる。 「ミリア 良い事を教えてやろう 黒獄獣は俺も倒した事がある それも、事実上一撃でな」
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