駆除

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オーガストを見てみろ。 口を開き涎を垂れ流し、 目には生気すら感じられず、 意思すらもなく、ただただ操られているだけの存在だ。 人である以前に、生物であるかも疑わしい。 人形と表現した方が適切か。 まぁ、ともかくだ。 オーガストは人ではない。 そう言った俺の発言に、当然ミリアは否定的な意見を述べた。 「確かに人だと捉えるのには少々無理がある だが、あの者がかつて人であった事には、間違いないのだぞ? あの者にも家族がいるだろうに、哀れだとは思わぬのか?」 オーガストの家族ねぇ……。 それは、ガルムの事なんだが。 ガルム本人も、身内の不始末は自分でなんとかするとか言っていたし。 オーガストを殺す事には、なんら問題もないだろう。 「オーガストの家族なら知っている 俺の仲間だ」 「何!? ならば、尚更助ける手立てを探らねばならぬのではないか? そうだ! ミキさえなんとかすれば、どうにかなるかも知れぬぞ?」 「いや、その必要はない」 「む?」 「ミキの駆除は後だ 先ずは、俺がオーガストを殺す」 ガルムとオーガストは親子だ。 身内に殺させるのは、双方共に酷だろうからな。 俺が代わりに、ガルムの目的を成してやろう。 そんな俺の思惑を知らないミリアは、俺の発言に戸惑っていた。 「な、何故だカズ…… 何故そこまで、あの者を殺したがるのだ?」 おいおい、ミリア。 その言い方だと、俺が危ない奴みたいだろ。 別に俺は、オーガストを殺したがっている訳ではない。 ただ単純に、合理的な手段を取るに過ぎない。 俺はそれを説明する。 「仮にミキを駆除したとして、オーガストが元に戻る保証などどこにもない 助かるかどうかも分からない曖昧な手段をとって、俺達が危険な目にあったらどうする? 俺は確実に自分の命が助かる方法を選んだだけだ」 「カ、カズ…… 何故、その様な考え方ができる? 慈悲はないのか?」 「そうだ 今は慈悲など必要ない 強いて言うなれば これが、"戦う"という事だからな」
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