駆除

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俺は、ミリアの発言が少し気になった。 "妹"だと? 「妹がいたのか」 「あぁ もう随分と会っていないがな」 「何故だ?」 「妹と私には、世間に対する見解の相違があった 私は、"人"として生きる道を選んだが妹は違った だから私達は、絶縁したも同然の暮らしをしておる」 要するに、気が合わなかったって事か。 「"優しいだけでは何も守れない" と言うのは?」 「私が妹から聞いた最後の言葉だ 恐らく、カズ同様に非情な気持ちもある程度大事だという事が、言いたかったのだろう かつて私達魔人は、世間から心無い罵声を浴びた事もあったからな」 なるほど。 ミリアの妹さんは、魔人に対する世間の偏見を 優しさで許容するのではなく、 非情さで抵抗しなければいけない、みたいな考えを持っていたのか。 なかなか、強気な奴みたいだ。 「今の妹さんの所在は?」 「分からぬ "禁足地"のどこかで、ひっそりと暮らしておるようだ いつか、会いたいとは思っておるのだが…… なかなか難しくてな」 うーん……。 ミリアにも、複雑な家庭の事情があるらしいな。 まぁ、そんな妹さんのかつての言葉もあってか、ミリアがやる気になってくれたのは嬉しい誤算だ。 戦力は多いに越した事はないからな。 ミキは、いい加減に俺とミリアの会話に苛立ちを見せ始めた。 「何をごちゃごちゃと言っておるか! 何度、余を愚弄すれば気が済む!?」 あ、待たせて済まんな王様。 会話が終わったから、今すぐ殺してやるよ。 俺とミリアは横に並んで、オーガストと向き合った。 ミリアはミキを煽った。 「そっちの戦力は、獣化人1体だけで良かったのか?」 「フン 他の魔物を呼んだところで、ミリアが居るのでは、ほぼ意味を成さん それに、オーガストの動きを阻害させるだけだ 汝等を殺すのは、オーガストだけで事足りる」 「そうか せいぜい後悔しない様にしろよ? 薄汚いネズミ野郎」 俺もついでに煽っておく。 と、同時に臨戦態勢を整えた。 拳銃を右手に、ナイフを左手に、構える。 そして。 「リコ 準備は良いか?」 「はいマスター! お任せ下さい!」 リコに助言をする様にと、指示もさせる。 「さて、悪く思うなよ 哀れな獣化人よ」 ミリアも、両手のひらから炎を噴出させる。 そして……。 しばらく、相勢力が沈黙し睨み合っていた時。 「やれ オーガスト」 ミキのその言葉で戦闘は開始された。
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