駆除

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俺の振るったナイフは、確かにオーガストの背後を捉えていた。 捉えていたのだが……。 ん!? 俺は斬撃の感触に、違和感を感じた。 まるで手応えがない。 「マスター! 対象の攻撃範囲内から離脱して下さい!」 「あぁ 今、そうしようと思っていたところだ」 俺はリコにそう応えると、オーガストから離れた。 そして、ナイフを確認してみる。 ふむ……。 血が付着していない。 結構強く振るった筈だが……。 何故だ? 俺は自ら感じていた違和感が、確かなものだと理解した。 と、同時にその原因を考えていた。 その時。 「グァア!!」 クソッ! オーガストは斬撃をものともせずに、攻撃を繰り返してくる。 考える時間すらないのかよ。 「マスター! 対象の右脇腹を潜り抜け、そのまま背後に離脱して下さい! その際、できれば斬撃を!」 また、斬撃だと? またしてもリコは、俺に銃撃の指示を出さなかった。 何か、考えがあるのだろうか。 「了解」 俺は返事をして、言われた通りの行動を取る。 「おらぁ!!」 今度は力いっぱい、ナイフを振るった。 それはもう、切り裂かんばかりにな。 しかし、それでもやはり斬撃に手応えはなかった。 ダメージを与えるどころか、怯みさえしない。 うーん……。 いい加減に気になりだした時。 「なるほど……」 リコはその理由を特定した様子で呟いた。 そして、俺にオーガストの攻撃を避けさせつつ、説明をしてくれた。 「マスター! この対象に、斬撃は有効ではない事が判明しました!」 うん。 それは、さっきから分かってる。 俺が知りたいのは、その理由だ。 「何故だ?」 「その理由は…… 対象を覆う"体毛"に関係があります!」
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