5125人が本棚に入れています
本棚に追加
"体毛"だと?
オーガストをびっしりと覆っている、あの黒い毛だよな?
そんなものが、斬撃を去なしていたのか?
にわかには信じられないが……。
「どういう事だ?」
俺はリコに、詳細の説明を要求する。
「あの体毛なのですが、
一本一本が、まるで針金の様に丈夫で、且つしなやかで強靭な構造を成しています
その強度は、以前対峙した"朱剛蜴"の鱗に匹敵します」
「なんだと!?」
銃弾を弾き返した事もある、あの朱剛蜴の鱗に匹敵する強度の毛を全身に生やしているというのか?
ハハハ!
なんだそれ。
道理でナイフが全然通らない訳だ。
リコは説明を続ける。
「しかも、鱗とは違い対象の関節部分――つまり可動域にまで体毛が隅々と生えている為、刺突も効きません」
なるほど。
確かに朱剛蜴との戦いでは、その強靭な鱗の下にダメージを与える攻略法として、ガルムは鱗が行き届いていない関節部分を狙っていた。
だが、このオーガストにはその攻略法が通用しない。
「俺に銃撃をさせなかったのもそれが理由か?」
「はい
対象の防御力に関しては、予めスキャンして把握はしていたのですが、体毛の性質は実際に近接してみないと分からなかったので……
それに……」
「それに?」
「銃弾は、確実に効果が発揮される部位を特定するまでは、使用しない方が良いと判断しました
弾数が心配なので……」
確かに、残り少ない"最強の攻撃"を無駄にはできないな。
「賢明だな」
と、言ってはみた俺だが。
ミキに対する腹いせに、1発無駄にしたばかりなんだよな。
反省します。
さて、じゃあそんなオーガストに対抗する手段だが……。
俺にはもう、その見当がついていた。
恐らくリコも分かっている筈だ。
オーガストの体毛を、攻略する事ができる奴。
俺は、ソイツを呼んだ。
「ミリア!
手を貸せ!」
最初のコメントを投稿しよう!