駆除

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俺の呼び掛けにミリアは。 「話は聞かせてもらったぞ 私の力が必要なのだな?」 話が早くて助かる。 俺はミリアに確認をとる。 「ミリア! 炎でオーガストの体毛を焼く事はできるか!?」 俺の考えはこうだ。 いくらオーガストの体毛が、丈夫で強靭な構造を成しているとしても。 所詮は毛だ。 燃やす事は可能な筈。 俺の確認に、ミリアは答えた。 「うむ 私の術にかかれば、体毛を燃やす事ぐらいは容易い だが……」 ん? 「だが、なんだよ?」 「問題は私の攻撃をうまく当てられるか、なのだ」 ふむ……。 確かに、オーガストのスピードなら避けられる可能性もあるな。 まぁ、そんな事を考えるのは後でいい。 取り敢えず、攻撃だ。 もし通用しなかった時の、対策はその時に立てる。 「当たらなかったら、その時はその時だ 取り敢えず頼む」 「分かった」 俺の指示で、ミリアは動きを見せる。 ミリアは手のひらに、炎の塊を形成した。 ユラユラと揺れる実体のない、赤き炎。 相変わらず不思議な術だな。 そして。 「食らうがいい! "魔人術"『魔火球』!!」 言ってミリアは、手のひらに形成している炎の塊を、オーガストに向かって投げた。 火の球を投げるって、奇妙な光景だ。 ミリアの投げた、火の球は放物線を画きながら、オーガストの下へと飛んでいく。 が、所詮は手腕の力で投げた球だ。 スピードは遅く、避けるのは俺でも容易い。 なるほど。 ミリアが当てられるかどうかの懸念をしていたのは、この攻撃速度によるものだったのか。 これじゃあ、当たらないわな。 なんて、俺が思っている時。 火の球は、とうとうオーガストに迫っていた。 あれ? 何故かオーガストは、その火の球を避けようとしなかった。 何故だ? いや、何故だか分からんが、これ当たるんじゃね? 俺と、恐らくミリアが淡い期待を抱いていた時。 「グァア!!」 オーガストは、腕を振るった。 それだけで、火の球はかき消される。 マジかよ……。
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