駆除

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オーガストの奴。 そもそも火の球を避けるまでもない、って感じだ。 「ククク…… そんなものが効くか!」 オーガストの背後で、ミキが誇らしげに喚いている。 アイツ、何もしてねぇクセにうるせぇな。 自らは動かず配下に命令を出すだけで、デカい態度を取る。 実に、王様らしい。 「そんな……!」 ミリアは落胆していた。 無理もない。 攻撃が全くと言っていいほど、通用しなかったんだからな。 だが、落胆している暇はないぞ。 何故、通用しなかったのかを早急に分析する必要がある。 「リコ」 俺はリコに分析と、その説明を仰いだ。 「はい、マスター! ミリアさんの火の球ですが…… 対象に効果がなかったのは、"燃焼時間"に問題があったのではないかと思います」 「"燃焼時間"?」 「はい! 本来、"火"というものは、"酸素"と"媒体"を消費する事で燃焼し続けるものなのですが…… ミリアさんの放った火は、純粋に火だけだったのです」 「ふむ つまり?」 「つまり、実体のない火は簡単に形状を維持できなくなります そうなると、火そのものが物理的な衝撃を受けるだけで、霧散し燃焼に必要な温度も、火と同時に消えてしまうのです」 「じゃあどうすれば、火を消されない様にできる?」 「それこそが"燃焼時間"です ですが…… 火が燃焼し続けるのに必要な"酸素"は問題ないにしても、その火を定着させる為の"媒体"――つまり対象が抵抗するとなると難しいですね……」 「要するに、オーガストの動きを止めて、そこに火が定着するまで、ミリアの火の球を当て続ければいいって訳だな?」 「はい、その通りです!」 よし、分析終了だ。 要はオーガストの動きを止めさえすれば、勝ったも同然。 だったら……。 「ミリア!」 俺はミリアの持つ、他の術を使う事にした。
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