駆除

36/57
前へ
/805ページ
次へ
ミリアの持つ他の術。 それは、"酸"と"毒"だ。 これらをなんとか駆使する事ができれば、オーガストの動きを止められるかも知れない。 「カズ 何か思い付いたのか?」 俺の呼び掛けに反応するミリア。 先ずは……。 「あぁ ミリア、酸を使ってみてくれ」 酸ならば、オーガストも容易に触れる事はできないだろう。 あわよくば、さっきの火の球をかき消した要領で触れてくれれば、たちまち体毛を溶かす事ができて万々歳だ。 避けられた時は、その隙を狙って絶え間なく酸の攻撃を繰り返していれば、その内当てる事ぐらいはできる。 俺の指示にミリアは。 「分かった! では、"魔人術"『汗酸』――」 と、酸による攻撃を放とうとした。 その時。 「――!! ま、待って下さい!!」 リコが慌てた様子で、静止を呼び掛けた。 それを聞いて、思わずミリアは攻撃を中断する。 「む?」 訳が分からない、といった様子で困惑な表情のミリア。 それは俺も同様だ。 「どうしたんだ? リコ」 攻撃を静止させた理由について、俺はリコに尋ねた。 するとリコは。 「酸は危険です この場では控えた方が良いです」 と、説明した。 うーん……。 分からん。 "この場では"、だと? 「一体、どういう事だ?」 「周りを見て下さい」 「周り? クソ汚ねぇ水だらけだが…… それが何か?」 「水と酸を反応させると、"溶解熱"が生じ、"突沸"が起きます」 なんだそれ? 「つまり?」 「つまり、酸が周りの水と化学反応を起こし、広範囲に飛び散るのです ミリアさんの発する酸は、鉄をも溶解させる強酸 そんなものが飛び散れば、対象どころかマスターも無事では済みません」 …………。 お、おう……。 マジか……。 危うく、仲間の攻撃でやられるところだったぜ。 リコの冷静な判断に救われたな。
/805ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5125人が本棚に入れています
本棚に追加