駆除

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おいおいミリア。 人が悪いな。 奥の手なんか隠し持っているなら、言ってくれよ。 「何か秘策でもあるのか?」 俺はミリアの意味深な発言について、尋ねた。 するとミリアは少し間を開けて、答えてくれた。 「この術はな 私の扱える術の中でも、かなり強力なものなのだ」 おぉ……! そんな術が! 「それは頼もしいな」 「だが、その反面 魔力の消費が極めて激しいのだ だから使ってしまうと、私自身うまく動けなくなってしまう恐れがある」 ふむ……。 強力な術だからこそ、相応のリスクが伴うという訳か。 それなら確かに、使うのを躊躇してしまって無理もない。 ミリアは続けた。 「しかし今はそんな事も言っておれん この術で、奴の隙をつければ、現状を打破するきっかけにはなるかも知れぬ カズ、後の事は任せても良いな?」 ミリアの奴。 リスクを覚悟で、大技を繰り出そうとしている。 そしてそれを成す為に、俺を信じてくれている。 ならば、俺も覚悟を決めるしかないな。 俺はミリアに応える。 「あぁ、後の事は任せろ だから頼む」 すると。 「フフッ 良い面だ」 そう言ってミリアは、手のひらに小さな炎を形成した。 は? それが、大技なのか? と、俺が疑念を抱いている時。 「この術を発動させる為には、前準備が必要になる 自らを強化するという準備がな 例えると、そうだな…… 獣人の獣化に似た様なものだ」 はぁ!? 「え、なんだよそれ!? ミリアもあんな姿になっちまうのか!?」 驚いた俺は、オーガストを指差してミリアに尋ねた。 そんな慌てふためく俺に、ミリアは説明をする。 「落ち着くのだ 魔人は獣人の亜種と言われておるからな、 少し似た特徴を有しておるものだ」 「じゃあ、やっぱり……」 「だが、あんな風に明らかな変化はないよ」 「え?」 「少し角が大きくなる程度だ と、言っても誤差の範囲だがな」 「なんだ……」 俺は安堵した。 ミリアまで、あんな怪物になっちまったらなんか嫌だしな。 ミリアは続ける。 「だが、魔力は今の比ではないくらいに上昇するのだ あの術を使う為には、それくらいの魔力が必要になるからな」 「そうか くれぐれも無理はするなよ」 「それはできない相談だ この術は、かなり無理をする必要があるからな」 言ってミリアは、手のひらに灯してある小さな炎を、自らの胸に押し当てた。 「"魔人術"『魔力解放』!!」
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