駆除

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ミリアがすげえ恥ずかしい――じゃなくて、格好いい技名を叫んだ瞬間。 ズドンッと、大きな音を響かせ、水面が爆ぜた。 見ると、そこには一つの大きな火柱が渦を巻いて荒ぶっていた。 その火柱は、底が水面にも関わらず、全く勢いが衰える様子はない。 お構いなしに、水を昇華させながら、凄まじい蒸気を巻き上げている。 確かに、ミリアが放ってきた今までの魔術とは規模が違う。 まるで比較にならない程に、強力な術だ。 「すげぇ……! これならいけるぞ!」 俺が関心している時。 ミリアは攻撃を仕掛ける。 手を動かし、何かを操っているかの様な仕草を見せた。 いや。 実際に操っている。 ミリアの手の動きに合わせて、火柱が動いていた。 「さぁ これをその身で受けて、無事でいられるか?」 ミリアの操る火柱はオーガストに迫る。 「クッ…… これは想定外だ」 ミキはそう言ったが、言葉の割に慌てる様子はなかった。 その理由は直ぐに分かった。 「グアァ!!」 オーガストは横に跳び、火柱を回避する。 なるほど。 あえて受けて立つ必要もないからな。 その火柱が危険なものだと判断したのなら、避けるという選択は賢明だ。 火柱の動くスピードは、決して速いとは言えない。 オーガストにとって、避ける事は容易いのか。 「だが、当たらなければどうという事はない」 ミキが落ち着いている理由はこれか。 しかしそれは、逆に言えば避けてしまう程に強力な術だという事になる。 クソッ……! 当たりさえすれば……。 なかなか火柱が当たらない事に、はがゆい思いをしている時。 ミリアはニヤリと笑った。 「火柱が一つだけだと、誰が言った?」 「なに?」 ミキが疑問符を浮かべたのも束の間。 突如として、断続的な爆裂音にも似た轟音が洞窟内に響き渡る。 そして。 俺はその光景に言葉を詰まらせた。 そこには、無数の火柱がひしめき合っていた。 その数……。 1、2、3、……――。 駄目だ。 数え切れない。 裕に30柱近くはある。 「当たらなければ…… なんだって?」 煽るミリア。 パワーアップしたミリアさん、マジ半端ねぇ。
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