駆除

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まるで唸り声を上げているかの様に、幾柱もある火柱はゴウゴウと燃え盛る。 「これが私の全力だ」 その炎の中に、凛と佇むミリアに俺は見入ってしまった。 なんというか、神々しい。 ミリアの全力を前に、流石にミキは怖じ気づく。 かと思ったが……。 「フンッ…… ただ数を増やしただけで、いい気になるなよ」 相変わらずの装いだ。 虚勢か? 「そう言っておられるのも、今の内だ」 言ってミリアは手をバッと、振るった。 すると火柱は、先程同様にオーガストに向かっていく。 当然オーガストは火柱を避けるが、今度はそれだけで終わらない。 オーガストの避けた方向には、既に別の火柱が待ちかまえている。 これで捉えたか!? そう期待はするが、そこは流石に獣人。 信じられない身体能力で、次々と火柱を避けていく。 だが……。 それも限界がある様に見える。 徐々にだが、着実にミリアの操る火柱はオーガストを追い詰めていく。 そして、ついに……。 「ぬぅ……!?」 流石にミキも声を上げた様だ。 それもその筈。 オーガストは、四方を火柱に囲まれていた。 前も後ろも。 右も左も。 体の周り360°。 もはや、オーガストに逃げ場などなかった。 「グルルル……」 キョロキョロと周りを見渡すオーガスト。 無駄な足掻きだ。 「ハァ……ハァ…… 終わりだ」 ん!? ミリアの奴、かなりバテてないか? "魔力解放"による"魔焼獄炎陣"とやらは、こんな短時間で体力を消耗させられるものなのか。 だが、ミリアの言った通り、もう終わりだ。 その火柱で、オーガストを焼き尽くしてしまえ! 俺と、そして恐らくミリアも勝利を確信した。 「燃えよ」 言ってミリアは手をぐっと握る。 その途端に、オーガストを覆っている火柱は一瞬にして中央へと動いた。 確実にオーガストを捉えた。 その筈だった。 しかし。 「グアァ!!!!」 火柱が狭まる瞬間。 オーガストは、信じられない跳躍力で上へと跳んだ。 おいおい……。 いい加減にしてくれ!
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