駆除

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「な!?」 いくら獣人とはいえ、その跳躍力は反則だろ! 俺達の今居る位置は、洞窟内でもかなり広いドーム状の場所だ。 その高さは、裕に5~6mはある。 イメージ的には、学校の体育館程の広さだな。 オーガストは、それ程までに高い位置の天井に到達していた。 殆ど予備動作なしでの、跳躍。 あの体力お化けめ。 「グルルル……」 オーガストは、天井に何本もぶら下がっている円錐形の岩の一つを掴んでいた。 「ハァ……ハァ……! ……おのれ!」 渾身の攻撃を避けられたにも関わらず、ミリアの心は折れず戦闘を続行した。 手を天井目掛けて振るい、火柱を目一杯伸ばす。 辛うじて火柱は天井に届いた。 が。 その一つの火柱に魔力の出力を注いだ為か、他の火柱は火力を弱める。 届いた火柱も、肝心のオーガストを捉えきれていなかった。 オーガストは、別の円錐形の岩に飛び移り、避けていた。 ぐぬぬ……。 「ハァ……ハァ…… クッ……! まだまだ!!」 ミリアも必死に頑張っているが、無情にも火柱はオーガストを逸れてばかり。 「ククク…… 残念だったなミリアよ 汝の魔力が尽き果てるまで、延々と逃げてやる」 ミキは完全に、余裕をひけらかしていた。 確かに、ミリアの体力は限界に近い。 ミリアが動けなくなってしまっては、いよいよ打つ手がない。 そうなってしまっては、なんとしてでも俺1人でも逃げるしかない。 なんて、以前の俺なら考えていたかもな。 俺は、この世界が元地球である事を知ってから、気持ちが変わった。 やらなければならない"明確な目的"ができた。 それを成す為には、ミキが邪魔だ。 絶対ミキは駆除してやる。 だからこそ。 ミリアが動けなくなる前に。 今、この瞬間に俺がなんとかしなければ! 俺は行動を起こした。
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