駆除

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ミリアがオーガストと奮闘中。 俺はその様子を見て、ある事に気が付いた。 空中を、行ったり来たりしているオーガスト。 円錐形の岩から別の岩に飛び移る、その瞬間だ。 オーガストは身動きが取れなくなっている。 いくら獣人であろうが、羽が生えている訳じゃない。 だったら空中で、身動きが取れないのは当然。 ほんの一瞬の隙だったが、ミリアが生んでくれた隙である事に変わりない。 そこを突く事ができれば或いは……。 そう思い、俺は考える。 だが、悠長に考えてばかりでもいられない。 とにかく行動だ。 取り敢えず、俺は自らのポーチを探りながら考えた。 オーガストを拳銃で撃ち落とすか? いや、オーガストは強靭な体毛を纏っている。 そもそも、拳銃がどれほど効果的かも怪しい。 しかし、考え方は間違ってない。 方向は合ってる筈だ。 高所から落下すれば、無事では済まないだろうからな。 うーん……。 問題はどうやって、オーガストに落下を誘発させるかだが……。 そう悩んでいた時。 ん? 俺は探っているポーチの中で、自分の手に当たる金属製の感触を覚えた。 これは……。 それを取り出す。 それは手榴弾だった。 しかも、最後の一個。 これを、当てる事ができればもしかしたら……。 爆発による衝撃で、オーガストを落下させる事ができるかも知れない。 よし。 俺は手榴弾を使う事を決断した。 決断はしたが、そう簡単な事ではないよな。 すげぇ速さで動き回るオーガストの、ほんの僅かな隙を狙い、俺の手腕だけで手榴弾を当てるなど。 成功する可能性はなくはないが、ごく僅かだ。 試行回数を稼げれば、可能性はあがるが……。 手榴弾は一個だけ。 つまり、試せる回数は一回だけ。 この限られた回数で成功を望むのなら、コイツの協力は必須だろう。 「リコ!」
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