駆除

45/57
前へ
/805ページ
次へ
リコは、俺に呼ばれた理由を分かっている様子だった。 「はい、マスター! その手榴弾を対象に当てるおつもりですね?」 「そうだ だが、俺では狙いが定まらない 投げる方向を指示してくれ」 「了解です! 対象の動きを分析します!」 言ってリコはレーザー状の光を照射して、オーガストに標準を合わせていた。 すると。 「マスター! 分析の結果、問題が発生しました!」 なんだと? 「報告しろ」 「はい! 対象の動きを予測し、そこから導き出される打点を割り出そうとしたのですが……」 「どうした?」 「筋肉を動かす際に生じる僅かな電気信号、 瞬発的な力を加える際に生じる予備動作、 体の向き、態勢、骨格構造などによる要因を鑑みた対象の進行方向や 引力、慣性、接地部の摩擦などによる外部的要因を鑑みた対象の流動的進行方向等々を加味し、 対象の軌道を割り出した所…… 予測される軌道に、幾つかの分岐があったのです!」 なるほど! 分からん! 難しい事を長々と言うんじゃない。 「分かり易く言うと?」 「えーと…… 対象がどの方向に回避するのか、予測ができません!」 なんだと!? 簡潔な報告でようやく、問題点が発覚した。 確かにオーガストの動きは滅茶苦茶だ。 平面ならまだしも、天井と壁、そして時々地面をあっちこっちに動き回っている。 立体的な移動をしている物体の、軌道を一つに絞り予測するなど、流石のリコにも無理があったか。 だが、そんな事で諦めていい程、楽観視もしていられない。 「なんとか、一つに絞れないか?」 「申し訳ありませんマスター! 無理です 対象が予測した軌道のどれを進行するのか、確率に表す事は可能ですが……」 「確率なんて曖昧なものではだめだ 確実な予測でないと!」 「そう言われましても……」 俺とリコが困っている時。 「要は、奴の動ける範囲を制限すればよいのだろう?」 ミリアが打開策を挙げてきた。 「できるのか?」 「ハァ……ハァ…… 任せておれ 私が火柱で奴を誘導する だが、これが最後の攻撃になるであろうな」 …………。 ふむ。 確かに、ミリアの火柱をうまく利用できれば、オーガストの動きを制限できる。 そうなれば、リコも軌道を予測し易い。 ミリアの残りの体力的にも、ここで決めたい所だな。 よし。 「分かった ミリア頼む リコ、誘導場所の指示を!」
/805ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5125人が本棚に入れています
本棚に追加