駆除

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俺の指示で、リコは動いた。 先程同様に……。 いや先程とは違い、より綿密にオーガストの動きを観察している風に見える。 そして、しばらくして。 「ミリアさん! 火柱を、あの位置にまで移動させて下さい!」 そう言って、リコはレーザー状の光を照射して、ミリアに火柱の位置を指定した。 オーガストの動きを制限させる為には、どの位置に火柱を設置するのが効果的か、リコには分かっている様だ。 リコの要求に、ミリアは応えた。 「分かった!」 ミリアは、指定された場所にまで火柱を移動させる。 すると、その場に差し掛かったオーガストは意図的に火柱を避ける。 それがリコの策略だとは知らずに……。 そして、そんな事を何回か繰り返した時。 「マスター! 対象の軌道の予測――いえ、断定ができました!」 リコが自信満々で、報告してきた。 予測を断定と言い直したって事は……。 つまり。 「オーガストの軌道を一つに絞り込めたのか?」 「はい! ミリアさんの誘導のおかげで、対象の軌道分岐を一つずつ排除していった結果、遂に対象の通るの軌道を断定する事が出来ました!」 よし! よくやった! 「詳細は?」 俺が尋ねると。 「はい! 今から43秒が経過した時に、対象はあの岩とあの岩の間を、約0.5秒程で通過します!」 言ってリコは、天井のとある場所を、光で指し示した。 ふむ……。 なるほど。 つまり、俺はオーガストがそこを通るタイミングを見計らって、手榴弾を当てればいい訳だな。 「ハァ……ハァ…… これでよいのか?」 ミリアはもはや限界だった。 「ミリア、ご苦労だったな 後は任せろ」 俺はミリアを労うと、手榴弾を手のひらで弄ぶ。 そして。 深呼吸をして、精神を集中させる。 イメージトレーニングもした。 手汗も拭いた。 疲労度はない。 体力は有り余っている。 体調は万全。 状態は最高。 状況は完璧。 いける。 「リコ 正確な指示を頼むぞ」 俺は手榴弾を握り締めた。
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