駆除

47/57
前へ
/805ページ
次へ
「はい!」 リコの張り切る返事を聞き、俺は構える。 「位置はここでいいのか?」 俺は手榴弾を投げる方向について、微調整を求めた。 リコは正確に、細かい指示を出す。 「もう少し右です! 角度は45°で、放物線を描く様に投げて下さい!」 「了解 投げるタイミングは?」 「マスターの腕力、手榴弾の重量、から投げられた手榴弾の速さを算出…… 目標地点までの直線距離が、凡そ13m…… それを放物線の軌道に修正、その軌道上を手榴弾が通過した際の速さを割り、目標地点までに到達する時間を導き出す その時間と対象が目標地点を通過する時間を逆算して…… えーと……」 リコが、なにやら複雑な事をぶつぶつと言っている。 っていうか、機械なんだから悩む必要なくないか? それしきの事、お前にとっては一瞬で計算できるだろ。 「リコ 悩むフリはいいから」 「あ、バレちゃいました? なんか悩んだ方が人間味があるかと思いまして!」 そんな事をする必要はないだろ。 機械のクセに、人間の真似事をするなど滑稽だ。 「そうかよ」 リコの意味不明なこだわりを適当に受け流し、俺は本題に戻る。 「で? 結局、いつ投げればいいんだ?」 するとリコは答えた。 「あ、今投げて下さい」 は? ちょっ!! 今かよ!! タイミングがズレれば、手榴弾はオーガストにかすりもしない。 それを瞬時に理解した俺は、慌てて手榴弾を指定された場所に投げた。 安全ピンが外れた手榴弾は放物線を描きながら、天井に迫る。 すると……。 まるで手榴弾にわざとぶつかって行っているのではないかと疑いたく程、その交差上にオーガストが姿を表した。 投げられた手榴弾の軌道上。 火柱を避けて逃げるオーガストの通行方向。 その二つの線が交わる時。 それは即ち、オーガストに手榴弾が命中する事を意味する。 結果は、まさに思い通り。 俺の投げた手榴弾は、空中でオーガストに当たった。 よし! 成功だ! と、安心したのも束の間。 ん? 俺は違和感を感じた。 って、おいおい。 俺は違和感の正体を直ぐに知り、そして絶望した。 なんとオーガストは、俺の投げた手榴弾を手で掴んでいた。 飛んでくる手榴弾を、空中で咄嗟に掴んだって事か!? 並外れた動体視力と、身体能力の成せる技だな。 ナイスキャッチ! って、いやいや。
/805ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5125人が本棚に入れています
本棚に追加