駆除

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戦闘開始してから一体、何回コイツに攻撃を防がれたんだ? あの手榴弾がさっさと爆発してくれれば、そう悲観する事もないが。 爆発までは結構な猶予がある。 もし、投げ返されでもしたら……。 今まで苦労が水の泡だ。 ミリアの身を呈した奮闘も。 リコの綿密な分析も。 全てが水の泡だ。 「グゥ……?」 オーガストは岩にしがみついたまま、掴んでいる手榴弾を不思議そうに見ていた。 「カ、カズ……? なんだその攻撃は? ただ石ころを投げただけではないか!」 ミリアは悲壮感漂う表情で、俺に説明を求めてきた。 その反応はもう飽きたぞ。 手榴弾をこのアストランで初めて使った時の事だ。 ノエルとティナも、今のミリアと似た様な反応をしていた。 「大丈夫だ 今に見てろ」 それだけ言って俺は、オーガストの掴んでいる手榴弾を早急に爆破させる手段を取る。 拳銃を構え、手榴弾に照準を合わせた。 俺のその判断は、自分でも驚く程に極めて迅速なものだった。 「グヴ……?」 オーガストは、少しの間。 本当に少しの間だったが、関心が手榴弾に移っていた。 俺はその瞬間を見逃さない。 その隙が生まれるのを、ずっと待っていたからな。 戦いの最中に余所見をするなど、命取りだ。 「そんなに気に入ったならくれてやるよ」 俺は拳銃の引き金を引いた。 その瞬間。 パンッと、破裂音が響いた。 と同時に。 ドンッと、爆裂音が響いた。 それは俺の撃った拳銃弾が、手榴弾に命中し、誘爆を促した事を意味していた。 「グアァ!?」 見ると、オーガストがしがみついていた岩は砕け散っていた。 当のオーガストは、周辺に黒煙を纏いながら、地面に真っ逆さまに落下している。 よし! 命中したな。
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