駆除

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「グアァアァァァ!!!!」 炎に焼かれ、地面をのたうち回るオーガスト。 水面を転げ回っているとはいえ、オーガストに着火した炎はなかなか消火されない。 ただただ蒸気を撒き散らしているだけだった。 でだ。 なんでこうなった? 炎に焼かれているって事は……。 つまり、ミリアがやったのか? なんだかんだで、魔力を温存していたとか? 尋ねてみるか。 「これはミリアがやったのか?」 俺の確認にミリアは。 「いや違う、私ではない」 困惑しながらでも、否定した。 ミリアは不思議そうに続ける。 「だがこの術は、間違いなく私が保有している "魔人術"『発炎』だ」 ん? なんか言ってる事が矛盾してるぞ。 「は? って事は、やっぱりミリアがやったんじゃないのか?」 「いや違う "発炎"は、火の粉を対象物に纏わせ一気に発火させる術なのだ それ故に、動かない対象物を燃やす時に良く用いる術なのだが…… なかなかに消費する魔力量が多くてな 今の私の魔力量では、これほどの術を使う事はできぬ」 うーん……。 訳が分からないな。 だったらオーガストが突然燃えだした事は、どうやって説明がつくんだ? 「つまり、どういう事だ?」 「詳しい事は分からぬ だが、これはまるで "私の魔力を別の誰かが使用した"という感じだ」 は? ますます意味が分からないぞ。 俺が頭を悩ませていると、ミリアは俺にとある確認をしてきた。 「そういえばカズは 先程、私の肩に触れたていたな?」 ん? 「お、おう それが?」 「その時、何か奇妙な感覚を覚えなかったか?」 は? 「何も感じなかったが?」 「そうか いやなに、カズの持つ"闇"が私に触れた事により、これを引き起こしたのかと思ってな」 "闇"だと? 「どういう事だ?」 「つまり推測だが、私の魔力をカズが利用したのだ "他力本願"を体現した様な術だ 実に人間らしい"闇術"に、相応しいと思わないか?」 なんだよそれ。 微妙にディスってねぇかそれ? 「"闇術"ねぇ……」 「まぁ、他人の術を勝手に自らで使役する術など、聞いた事もないがな 何はともあれ、結果は上々だ 後は頼むぞカズ」 ミリアにそう言われて、俺はオーガストの様子を確認する。 炎は収まっていて、焼け爛れた皮膚が痛々しい。 「ウゥヴ…………」 オーガストは完全に意気消沈していた。 結局、オーガストが燃えてしまった原因はよく分からなかったが。 オーガストの体毛を焼き払うという目的は達成された。 結果オーライだな。
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