駆除

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俺はオーガストに近付く為、歩を進めた。 「油断するでないぞ? 獣が最も凶暴になるのは、追い込まれた時だ」 「あぁ」 ミリアの忠告を胸に刻み、俺はオーガストの目前までたどり着く。 地面に、うつ伏せの状態で倒れているオーガスト。 時折、腕を支えにして立ち上がろうとする仕草を見せるが、直ぐに倒れ込む。 「グヴゥ……」 辛そうだな。 体毛が燃え、爛れた皮膚が露わになったオーガストの防御力はもはや皆無。 俺は拳銃の銃口を、オーガストの額に押し当てた。 「今、楽にしてやるよ」 そして、引き金に人差し指をかける。 人差し指に力を入れる瞬間。 「済まねぇなガルム こうするしかなかったんだ」 俺は声に出して、ガルムに謝罪をした。 いや……。 違うな。 曲がりなりにも"人"を殺すんだ。 その良心の呵責に対する言い訳として、俺は自分自身を肯定させているんだ。 全く……。 "人間"って奴は、こういうところがある。 まぁ、それが悪いとは思わないけどな。 「死んでくれ」 俺は無慈悲にも引き金を引いた。 瞬間。 「ガ……ルム…………」 ん!? オーガストの奴、今何か喋ったか? そう感じたのも束の間、その言葉を確かめる術は直ぐに失われる。 オーガストは俺の撃った銃弾により、頭部を後ろに仰け反らした。 血飛沫と脳漿(のうしょう)を撒き散らし、首が凄い方向に曲がっていた。 赤い血飛沫。 白い脳漿。 それとは別に、透明な液体も確認出来た。 その液体がオーガストの目から流れ落ちた涙だとは、全力で気付かないフリをした。 何はともあれ、オーガストを殺す事には成功したが……。 クッソ……。 後味の悪い結果だ。 これもそれも、全てはアイツが悪い。 俺はその元凶を睨みつけた。 「ミキ!!」
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