駆除

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ミキは、オーガストの死に最初こそ驚いていたが、直ぐに落ち着いた様子で喋りだした。 「よもやオーガストが人間如きに敗れるとはな 汝等人間が生み出した、小賢しい道具をナメていた様だ」 よくもそんな事が言えたものだな。 「なに、他人事みたいに言ってやがる テメェも今から、その人間如きに殺されるんだぞ?」 「余を殺す道理があるとでも?」 「道理しかねぇよ テメェは、罪のない魔物共を操り、自分の野望の為だけに酷使してきた 死んで詫びてもらうのは当然だ」 俺はミキに、自分のしてきた罪を認識させようとした。 しかしミキは。 「傲慢が過ぎるぞ穢らわしい人間よ 汝の器で余を計るな」 自らの罪を認め様としなかった。 それに傲慢だと? 俺の考えが自分勝手だとでも言うのか? ミキの言い分が分からねぇな。 殺す前に尋ねてみるか。 「どういう意味だ?」 「世界に起こり得る理(ことわり)とも呼べる事象には、すべからく何かしらの意味がある」 「何が言いたい?」 「分からぬか 余が生まれた事――つまり余が玉璽を得た事にも、確固たる意味があるのだ」 「は? だからテメェが魔物共を操った事は、世界の意向だとでも言いたいのか?」 ミキの野郎。 自分のしでかした事は、世界的な規模で肯定されている、と言いたいみたいだ。 ご都合主義な考え方だな。 実にアホらしい。 聞いた俺が馬鹿だったよ。 俺は早足でミキに近付く。 ミキは既に足を銃撃されている為、動けない状態だ。 「チッ…… 話にならねぇな 所詮はネズミの戯れ言か」 ミキに近付くと、俺は拳銃を突き付けた。 「殺す側から殺される側になった気分はどうだ? 死ぬ覚悟くらいはできてるんだろうな?」 俺の脅迫に動じず、ミキは話の続きをした。 「世界で起きる事象には必ず意味がある そう 太古に汝等人間が、滅ぼされた事にもな」 俺はその言葉を聞いて、一瞬心が揺らいだ。 これは動揺か? 俺達人間が、ニルヴァーナ共に滅ぼされた事には理由があっただと? チッ! 馬鹿馬鹿しい! 人間が滅ぼされていい正当な理由などある筈がない。 これもミキの戯れ言だ。 「それ以上、下らない事を言って見ろ 手足をもいで想像を絶する苦痛を与えながら殺してやる」 俺が脅すとミキは不気味に笑った。 「ククク…… 殺りたければ殺せ だが、余を殺した事を必ず後悔するだろう」
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