駆除

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ミキを殺した途端に、周りは静まり返った。 最初からこの"泥洞・ボロス"は、それなりに静かな場所だったのかも知れない。 しかしミキが居た時と比較すると、確かに静寂は感じられた。 主(あるじ)が消失した住処というのは、なんというか不気味だな。 「終わったのか?」 ミリアか。 「あぁ」 「ミキの奴、最期になんて言っていたのだ?」 ミリアには、俺とミキの会話が聞こえていなかった様だな。 「別になにも 殺した事を後悔するとか、なんとか言っていたが ミキの戯れ言だろう 気にする事はねぇよ」 「そうか まぁこれで、人里が魔物に襲われる事はなくなったという事だな」 「そうだな 平和になるぜ」 言いながら俺は、ミキの死骸を尻目にその場を去った。 ミキを埋葬してやるつもりなど、毛頭ない。 ミキは、世間を騒がせたとはいえ、所詮は魔物だ。 特別扱いはできない。 他の灰子諸共、そのまま腐って汚水の一部になるのが、お似合いだ。 オーガストの死体は……。 まぁ、いいか。 処理するのが、単純に面倒だ。 放っておこう。 俺はそんな事を考えながら、ミリアの下へと向かった。 ミリアは、魔力を使い果たして満足に動けないからな。 心優しい俺が、手を貸してやろう。 「さぁ、ミリア さっさと、こんな汚ねぇ場所から抜け出すぞ」 言って俺は自分の肩を、ミリアに預けさせ、立ち上がる。 「済まぬなカズ」 「謝る必要はねぇよ ミリアに無茶をさせた俺が悪い」 俺、超紳士。 そして俺達は、"泥洞・ボロス"を後にした。 洞窟を出て、ようやくガスマスクを外せた。 ふぅ……。 やはり、外の空気は別格だな。 あんな薄気味悪い汚水まみれの洞窟など、人の訪れていい場所ではない。 二度と来るものか。 ミリアを支えながらの歩行の為、移動速度は遅いが、俺達は着実に歩を進めていた。 浅い沼地を抜け、森にさしかかった時だ。 「カズ お前はこれからどうするのだ?」 ミリアが不意に尋ねてきた。
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