相違

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森を歩いて、何時間が経っただろうか。 日は落ち、森は暗くなり始めていた。 こうして歩いていると、初めてこのアストランに転送させられた事を思い出す。 あの時は、 怪我もしていたし、 周りも暗かったし、 突然、怪物に襲われるしで 散々だった。 とにかく怖かった。 だが、今はどうだ? 状況こそ違うが、周りの雰囲気はあの時と似ている。 にも関わらずだ。 今は何も感じない。 自分でも何故か分からないが、恐怖とか不安とか全然感じなかった。 馴れか? 馴れって怖いな。 まぁ、ミキを倒した事により魔物と遭遇する様な事はない筈だ。 そんな思いも、俺の恐怖心を鈍らせていた要因だろう。 ハハハ! 敵に狙われないって良いな。 これが安寧だ。 俺は意気揚々と、歩を進めていた。 すると見えてきた。 光だ。 街の光。 ようやく辿り着いたみたいだな。 俺が辿り着いた場所。 それは、『王都・ニルバニア』だった。 随分と久し振りな気がする。 いや、実際に久し振りなんだよな。 4日振りか? まぁ、取り敢えず進むか。 俺は早速凱旋し、ニルバニアに入国した。 この時代の連中は、どうも聖人みたいな考え方をしている奴が多い。 だからだろうか。 入国するのに、何も審査がない。 悪人なんて居ないみたいな考えらしい。 その代わりに、外に出る際には安全性を考慮され、それなりの審査がある。 なかなか過保護なシステムだ。 そんなシステムのお陰で、俺は普通にニルバニアに入れた。 さて、色々やる事があるからな。 先ずはそうだな……。 ミリアに頼まれた"魔給水"を、忘れない内に買っておくか。 そう思い俺は、売店に向かった。 いつしかノエルと一緒に、買い物をした時の売店だ。 その道中。 ふむ……。 周りは夜という事もあってか、人通りは少ないな。 俺が帰ってきた事に気が付く人など、居ないみたいだ。 なんか、拍子抜けだな。 無事に帰って来た俺を歓迎してくれてもいい様なものだが……。 ま、まぁ、全然気にしてないけどな。 いや、マジで。 売店に辿り着くと、そこには見に覚えのある後ろ姿があった。 買い物中かな? 俺はソイツに背後から、声を掛けてみる。 「よっ! ラクター!」
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