相違

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ラクター・ヴィンター ノエルの弟だ。 血縁関係はないけどな。 俺に呼ばれたラクターは。 「え?」 きょとんとした表情で、振り返った。 「久し振りだな こんな遅くに買い物か? あ、オバサン "魔給水"を1つ売ってくれ」 俺はラクターに話し掛けるついでに、店番をしている女性に注文をする。 ラクターは俺の顔を確認した途端、表情をみるみるうちに変えていく。 目を見開き、 口を大きく開け、 驚嘆に満ちた表情だ。 「あ……あ…………!! カ、カカ……!!」 おいおいラクター。 声が出ていないぞ? 背後から呼ばれた事に、そんなに驚いたのか? そんなラクターを余所に。 「はいよ! "魔給水"だね 1つ、250ニールだよ」 店のオバサンは、俺の対応をしていた。 商魂たくましいな。 「ほい」 「毎度あり!」 俺は金を支払い、オバサンが差し出した瓶を受け取る。 よし。 "魔給水"を手に入れたぞ。 後はこれをミリアに届けるだけだな。 なんて思いながら、購入した"魔給水"をポーチにしまう。 その時。 「カズさん!!??」 ラクターがようやく言葉を発した。 かなり驚いた様子で、俺を凝視している。 その様子じゃあ、大体の事情は知っているみたいだな。 大方、ノエルから聞かされていたんだろう。 俺がアイツ等を逃がす為に、1人で魔物共を受け持ち別離した事を。 そんな事情を知っている者からすると、俺の唐突な帰還には、驚いてしまって無理はない。 「俺以外に、こんな男前は居ねぇだろ? どうだ、元気にしてたか?」 「それはこっちの台詞ですよ! ゆ、幽霊じゃないですよね……?」 おいおい。 確かに死にかけたが、縁起でもない事言うんじゃねぇよ。 「ハハハッ! 勝手に殺してくれるな! 俺を誰だと思ってる?」 「そうですよね! カズさんが死ぬ訳ないですもんね!」 「当たり前だろ? 色々あって、帰りが遅くなっちまったけどな」 「よ、良かったです…… 本当に、無事に帰って来て何よりです!」 あらら。 ラクターの奴、涙を流しちゃったよ。 そんなに喜んでもらって嬉しいぜ。 ラクターは直ぐに涙を拭うと、ある確認をしてきた。 「そうだ! お姉ちゃん達には、もう会ったんですか?」
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