相違

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ラクターと、初めて会った時の事だ。 ラクターは、たった1人で森を彷徨っていた。 ラクターの外出を、門番が許したとは考えづらい。 つまりラクターは、単独でニルバニアの壁外に出た事になる。 それには、なにか抜け道がある筈だ。 俺は、ずっとその存在を怪しんでいた。 今のラクターの発言から、もはや抜け道の存在は確定的だ。 それを知っていて損はないだろう。 俺はラクターから、抜け道を聞き出す事にした。 順をおってな。 「結局ノエルには抜け道を教えたのか?」 「はい、教えましたよ カズさんを捜してきて欲しかったので」 あれ? 教えちゃったのかよ。 ラクターは相変わらず、ガキだったみたいだ。 「それで? ノエルの奴は?」 「教えたんですけど、お姉ちゃんはニルバニアに留まる事にしたそうです カズさんなら大丈夫だろうから、信じて待つって」 「そうか」 流石に考えを改めたみたいだな。 切羽詰まってラクターから抜け道を聞き出したが、ギリギリのところでそれが無謀だと理解したのだろう。 ノエルが馬鹿じゃなくて安心したぜ。 まぁ、理由がどうであれ、ティナはともかくガルムなら迷わず飛び出しただろうな。 さて、本題に移るか。 「なぁ、ラクター 俺にもその抜け道ってのを教えてくれねぇか?」 俺の頼みに、ラクターは浮かない表情を浮かべた。 「え……? どうしてですか?」 「いや どうしてって言われても いざという時に、役に立つかも知れないだろ?」 「うーん…… でも…… お姉ちゃんに他言はしない方がいいって言われてて……」 何? チッ……! ノエルの奴、余計な事を。 仕方ない。 俺はナイフを取り出した。
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