相違

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そして俺は、ラクターから抜け道を教えてもらった。 まさか、地下水路がニルバニア郊外の川と繋がっていたとはな。 抜け道という割りには、以外でも想定外でもなく、案外在り来たりなルートだったな。 だからこそ、逆に盲点だった。 まぁ、これで門番の目をかいくぐって、ニルバニアの壁外から出られる様になった訳だ。 よし。 これは有効に活用させてもらおう。 抜け道を教えてもらった為、俺は約束通りナイフをラクターに譲った。 「ありがとなラクター ほら、約束の物だ 大事に使えよ」 「ありがとうございます! 勿論大事にします! これで僕も、カズさんみたいに強くなれる様に頑張ります!」 「おう 楽しみにしてるぞ」 気が付くと、俺とラクターはヴィンター家に到着していた。 送迎完了だな。 「着いたみたいだな」 「はい! ここまで送ってもらって、ありがとうございます! お茶でもどうですか?」 「いや、遠慮しておくよ 俺は早いところ、家に帰った方が良さそうだからな」 家というのは、俺の所属パーティ『灰の泥』の拠点地だ。 アイツ等を、早いところ安心させてやらねぇとな。 「それも、そうですね 分かりました!」 「あぁ お母さんによろしくな」 「はい!」 ラクターは嬉しそうに手を振った。 俺からナイフをもらったのが、よっぽど嬉しかったみたいだ。 喜んでもらって何よりだな。 「じゃあな ラクター」 そして俺は別れの挨拶をした。 「はい!」 ラクターはそう返事をして、家に入ろうと体の向き変える。 あ……! その時、俺はあることを思い出し、ラクターを呼び止めた。 「ちょっと待てラクター お前に、もう一つ渡したい物がある」 俺の呼び止めに、ラクターは振り返った。 「え? なんですか?」 「これだ」 俺がラクターに渡した物。 それは、以前ノエルが一方的に俺に貸してきた本。 『翼の神』だ。
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