相違

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しばらくして、落ち着きを取り戻したノエルは、スッと俺から離れた。 ふぅ……。 やっと冷静になったか。 いい加減に、こっぱずかしかったからな。 ノエルが離れた事により、その表情が確認できた。 目を赤くして、頬は涙で濡れている。 不細工な面しやがって。 可愛い顔が台無しだぞ。 「大丈夫か?」 優しく声を掛ける俺、マジイケメン。 するとノエルは。 「ごめんなさい…… カズ、本当にごめん……」 そう言って、何度も頭を下げた。 ふむ。 どうやら、俺を囮にして逃げ延びた事をかなり気にしていたみたいだ。 ノエルは、そして恐らくティナとガルムも、良心の呵責にずっと苛まれていたんだろう。 コイツ等が気負う気持ちも分かるが、あれは俺が仕方なくやった事だ。 誰も責任を感じる必要はない。 俺はノエルを宥めた。 「そう気にするな ラクターから色々聞いたよ 俺を助ける為に、随分と動いてくれたんだろう?」 「え? ラクターに会ったの?」 「あぁ そこで偶然な」 「そう でも私達は、結局なにもできなかった……」 「そんな事はねぇよ 現に、ラクターからお前らの行動を知った時、俺は元気づけられたぞ?」 「でも、実際は……」 しつけぇな。 気にするなって言ってるんだから、気にするなよ。 「ノエル なら、この件は貸しにしておいてやるよ いつか、俺を助けてくれたらそれでいい だから、もう泣くな」
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