相違

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俺がそう言うと、ノエルは渋々納得してくれた。 「わ、分かった…… グスン……」 やれやれ、やっと泣き止んだか。 ノエルの取り乱した姿は、なかなかに珍しかったな。 ノエルは泣き止んだついでに、あるものを俺に手渡してきた。 「あ、そうだカズ コレを返しておくよ」 「ん?」 ノエルが手渡してきた物。 それは、"小銃"だった。 そうか。 コイツ等を逃がす為に、俺がノエルに貸していたんだったな。 「おう」 俺は返事をしながら、その小銃を受け取った。 ノエルは続ける。 「それのお陰で、私達は逃げ切る事が出来たの」 「そうか 無事で何よりだよ」 応えながら、俺は小銃を確認してみた。 ふむ……。 なんてこった。 弾が0だ。 まぁ、予想はしていたけどな。 元々弾数に、余裕がある訳じゃあなかったし。 魔物の群れから逃げ切るには、弾薬の節約など考えなかったのだろう。 俺が貸したのだから、文句は言えないな。 だが、もうこの小銃は使い物にならない。 銃としての機能を失った、ただの鉄の塊だ。 こんなデカいものを持っていても、正直邪魔なだけだな。 もう、要らない。 そう判断した俺は、ノエルに小銃を突き返した。 「やるよ」 「え!?」 当然驚くノエルに、俺は簡潔に説明した。 「その武器は、攻撃回数が限られている 今はそれが0の状態なんだが…… 残念ながらここでは、それを回復させる手段がなくてな だからもう使えないんだ」 「そうなの? でも、こんな凄い物を私に……?」 「別に凄い物じゃねぇよ 俺の故郷ではありふれた物だ 家にでも飾っておけよ」 俺の突き返した小銃をノエルは受け取ると、それを不思議そうに眺めながら呟いた。 「カズの故郷……?」 その呟きを聞いて、レイナが話に入ってくる。 「そう! 今から、その事について話そうと思うの!」
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