相違

32/105
前へ
/805ページ
次へ
俺の考え方を改める? また、馬鹿な事を言ってやがる。 それは無駄というものだ。 俺は、レイナみたくニルヴァーナを肯定するつもりは一切ない。 他人に自らの意見を押し付けるなど、傲慢だ。 「それはできない相談だな」 俺が否定すると、レイナは。 「違う、そうじゃないの」 そう言って、首を横に振った。 ん? どういう事だ? レイナの台詞は、俺の思っている事を理解した上での、否定だった。 「違うって何がだよ? レイナは俺に、ニルヴァーナを肯定して欲しかったんじゃないのか?」 「できればそうして欲しいかな でも、カズのニルヴァーナに対する敵意は消えないでしょう?」 「それが分かっているのに、俺の考え方を改めたいっていうのはどういう事だ?」 しばらく、レイナは俯いて沈黙した。 おい、何故黙る。 「レイナ?」 俺の呼び掛けに反応して、レイナは確かめる様に聞いてきた。 「私には、未来を視える魔力があるって言ったよね?」 「あぁ、"既視"だろ」 「うん その魔力で、私にはカズの未来が視えたの」 何? 俺の未来だと? それが、俺に考え方を改めさせたかった事に、関係あるのか? なら……。 「俺の未来? どんな未来だよ」 俺の核心に、レイナは浮かない表情で答えた。 「それは…… 言えない」 は? おいおい、そりゃないぜ。 「なんだよ 気になるな」 「正確には"教えられない"って言った方が正しいかな」 「なに?」 「私の"既視"は不完全だって言ったでしょう? だから、明確に何が起きるのかは分からないのよ」 「だったら 何故、浮かない表情をしていた? 俺の考え方を改めさせたいという理由も、不明瞭なままだぞ」 「そうだよね…… でも、これだけは言えるの なんだか、嫌な予感がしてさ」
/805ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5125人が本棚に入れています
本棚に追加