相違

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俺がニルバニアに帰って来た、もう一つの目的。 それは、この使い物にならなくなっているタモサンを、ティナに修復してもらう事だった。 机に置かれた、手のひらサイズの楕円形の物体を、コイツ等は不思議そうに見つめていた。 すると、ティナがおもむろにタモサンを掴み取る。 「"技術力の結晶"? 結晶って事は、コレは鉱物なの?」 そういう意味じゃねぇよ。 ニュアンスでなんとなく分かるだろ。 「結晶って言ったのは比喩だ それは鉱物じゃない」 「じゃあ、なんなの? 鉱物じゃないって言われても、私には石ころにしか見えないけれど……」 まぁ、無理もないか。 リコと同型とはいえ、そのタモサンの状態は、錆び付き、腐食し、変色している等、劣化が著しい。 実際、俺だって石ころにしか見えない。 だが、俺にはリコがいる。 それ故に僅かに見られるタモサンの特徴を知っていた。 だから、俺にはそれがタモサンだと理解できていた。 仕方ない。 この際、話しておくか。 どうせ、説明のついでだ。 俺は、コイツ等にリコの正体を明かす事に決めた。 「ソレの正式名称は、 "多目的多才汎用携帯端末機" 自衛隊員に支給されている、サポート道具だ 似た様なものは、一般人にも普及していたがな」 「サポート道具? こんな小さい物が、一体何の役に立つの?」 「役には立つさ 俺――いや、俺達も大分それに助けられたからな」 「"俺達"? っていう事は、私達も恩恵を受けたの?」 「あぁ ソレの、正常なのがここにいるからな」 「え? どういう事?」 疑問符を浮かべるティナと、それと同様にガルムとノエルも首を傾げていた。 そんなコイツ等に、俺は答えを突きつける。 話に該当する奴を呼んだ。 「リコ」
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