相違

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なるほどな。 だから、ラロの民の末裔がニルバニアに住んでいる訳か。 その生い立ちは分かった。 だが、なんでそんな余所者がニルバニアで"名門"と呼ばれているんだ? と、俺が疑問を思った時。 それを、まるで説明するかの様にレイナは続けた。 「そして、ラロの民は独自の奇妙な魔術を持っていてね それは、"奇術"って呼ばれているの "奇術"には、学術的価値があるから 当時のニルバニア王は、そのラロの民をかなり丁重に扱ったの その過程で、貴族となったのよ それが後の、"名門・ヴェール家"って訳」 ふむ、なるほどな。 そんな背景があったのか。 しかし、気になる事があるな。 「学術的価値があるにしては、その"奇術"とやらは全く聞かないぞ?」 そう。 ニルバニアが"奇術"を重んじているにしては、世間であまり知れ渡っていない様に思える。 そもそもティナ自身が、自らの真の素性を知らなかったし。 この話をする前のレイナの様子などを鑑みて、考えられる事は……。 俺は続けて、聞いてみた。 「まさか、"奇術"の存在を隠していたのか?」 するとレイナは答えた。 「別に、隠していた訳じゃないの ただ……」 ん? 「ただ?」 「ラロの民はね、 仮にもニルヴァーナが滅ぼそうとした一族よ」 「つまり?」 「つまり、それを匿うって事は、神の意志に背く行為になりかねないの だから、ラロの民特有の"奇術"を、公の場に引き出す事はできなかった」 「あー」 「で、そんな年月が経ち、ティナちゃんの一族の間では"奇術"の性能がどんどん薄まってきているの だから、今となっては誰も"奇術"を知らないって訳よ」 要は廃れていったって訳か。 …………。 あれ? ちょっと待て! それじゃあ、ティナに"修復"は使えないって訳か!? それは困る。
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