相違

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光に包まれたタモサンは、みるみるうちに錆びが剥がれていく。 錆びだけではない。 傷や、歪み、色合いなど。 あらゆる不良要因が、消えていっている。 その様子は、まるで汚れから浄化されていっているみたいだ。 そして、しばらくして。 「ハァ……ハァ…… もうだめ……」 ティナは疲労を訴えると、構えている杖から光を止めた。 見ると、タモサンの状態はリコの外見と遜色ない程に修復されていた。 おぉ……。 これは正直驚いた。 ティナに期待していなかった訳ではないが、ここまでうまくいくとは予想外だ。 「ティナ! すげぇよお前! 良くやった!」 「ハァ……ハァ…… と、当然よ この私を……ハァ…… 誰だと思っているの?」 俺の賞賛に、ティナの態度は相変わらずだったが……。 それより、えらい疲労困憊(こんぱい)しているな。 「大丈夫か?」 俺の心配にティナは。 「ハァ……た、大した事ないわ 慣れない魔術の使用には、魔力を多く消費してしまいがちなの しばらくしたら、回復するわよ ハア……ハァ……」 そう言って、魔給水を飲みながら強がっていた。 本人が大丈夫って言うなら、まぁ大丈夫なんだろう。 それより、一つ疑問があるな。 ティナが修復を扱えたのは、嬉しい誤算だったが。 レイナの見解では、ティナの一族からは既に"奇術"が廃れているって話だったぞ? そもそも、ティナ自身が叡人の割りには、魔力量が少ない落ちこぼれだ。 そんなティナに、稀少な"奇術"を容易に扱えたのが、俺は不思議だった。 ちょっと、知っていそうな奴に聞いてみるか。 「レイナ 何故、ティナは"奇術"を扱えたんだ?」 俺の疑問に、レイナは少し考えた後、見解を述べた。 「うーん…… 確かに不思議ね もしかしたらティナちゃんは "隔世遺伝(かくせいいでん)"を受け継いだ器なのかも」 ん? "隔世遺伝"?
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