相違

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俺の考えが揺るがないものと思ったのだろう。 それでもノエルは、俺への説得を止めなかった。 それほどまでに、俺の発言はコイツ等にとって看過できない案件だったみたいだ。 「カズは間違っている」 これはまた、ストレートな批判だな。 俺は応えた。 「だろうな」 その返事に、ノエルは困惑していた。 「え?」 おっと、勘違いするなよ。 俺は自分の考えが間違っているなんて、認識はしていない。 俺は誤解を与えない様に、続けた。 「そう お前等にとってはな」 「? どういう意味よ?」 分からないか。 「考え方など人それぞれという意味だよ 本当の意味で正しい事なんか存在しないんだ」 「え?」 「俺にとってはこれが正しい ノエルの言っている事も正しい 大切なのは、 "誰が"正しいかではない "何が"正しいかだ お互いが正しいから、摩擦が生まれる それが人の性だ」 「そんなの詭弁だわ そんな理論で、カズの行動を認めるとでも思っているの?」 「だから、言っているだろ? 必ずしもお前等が認める必要はねぇよ もう、俺に構うな」 「え…… それって……」 俺のその発言で、ノエルは察したみたいだ。 俺の決別の意思を。 「達者でな 色々、楽しかったぜ」 本当は挨拶なしで去るつもりだったが……。 まぁ、感づかれたんじゃあ仕方ないよな。 俺は手を振って、向きを変えると去ろうとした。 その時。 「行かせない!」 見ると、ノエルが杖を俺に向けて構えていた。 ノエルだけじゃない。 ティナも杖を構え、ガルムも身構えていた。 …………。 チッ……! 話の通じない連中だな。
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