相違

68/105
前へ
/805ページ
次へ
俺のその報告に、ガルムは。 「は?」 と、きょとんとした表情を見せた。 が、すぐに。 「はぁあ!? カズ、テメェ!! そりゃあ、一体どういう事だ!?」 怒りを露わにしていた。 物事の理解が、少し遅れているみたいだな。 ノエルとティナに関しては、手で口を覆い信じられないといった表情を見せていた。 ガルムは続ける。 「答えろカズ!! 何故、俺の親父を殺した!?」 あ? 馬鹿かコイツは。 いや、馬鹿だったな。 暴走した父親が、周りに迷惑をかけてほしくないと言っていたのはお前だろ。 俺は、その迷惑を実際にかけられた身だ。 ガルムの怒りは分からん訳ではないが、その怒りは理論に欠く実に感情的な自分勝手なものだ。 「おいおいガルム 俺を責めるのは、お門違いじゃねぇのか?」 「なに?」 「俺はな テメェの身内の不始末で、死にかけたんだぞ?」 「な……! 俺の親父は、カズを襲ったのか?」 やっと、理解できたか。 まぁ、厳密には"獣の王"の仕業なんだが。 「まぁな あの後色々あってな 俺じゃなかったら死んでいたぞ?」 「…………」 よし。 ガルムを黙らせたぞ。 ここでだめ押し。 「ガルム 俺のやった事は、いわば正当防衛だ お前に俺を責める資格はあるのか?」 「ぐっ……」 馬鹿なガルムに言い返す程の、語彙力はない。 論破できたかな。 一応、あの事に関しても釘をさしておくか。 「だからなガルム お前には目的がなくなった訳だ もう無理して強くなる必要はねぇぞ 獣化薬を、"あの人"からもらうのはもう止めておけ」 "あの人"というのは、ミリアの事だ。 ガルムは、ミリアから獣化薬をもらっていたからな。 ミリアの身の為にも、その存在を仄めかす獣化薬は、あまり公の場に出す訳にはいかない。 俺のその発言に、ガルムは更に驚いていた。 「カズ……! 何故それを? テメェ、どこまで知ってやがる?」 「言ったろ? お前等を逃がした後、色々あったんだよ」 「そんな……」 「さぁ、これで分かっただろ? 俺は自分で身の回りの危険をことごとく排除してきた つまり、壁外に出てもなんら危険はないんだよ じゃあな」 俺は伝える事を伝えて、今度こそ去ろうとした。
/805ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5125人が本棚に入れています
本棚に追加