相違

69/105
前へ
/805ページ
次へ
去ろうとしたのだが。 「待ちなさいカズ! 話はまだ終わってないわよ!」 また、ノエルがつっかかってくる。 いい加減に、うんざりするな。 「いいや お前等と話す事は、もうなにもねぇよ」 言いながら俺は向きを変えて、手をヒラヒラと振って歩を進めた。 その時。 「ティナ!!」 「えぇ!!」 なにやらノエルがティナに指示を出し、ティナがそれを容認していた。 嫌な予感がして、俺はくるっと向きを直し、ティナの行動を確認した。 が。 「"拘束魔法"『光輪の枷』!!」 ティナのその言葉を聞いた時には、既に遅かった。 「マスター!!」 「ぐっ……!?」 リコの咄嗟の警告も虚しく、俺は光の輪に腕ごと縛られ、身動きがとれなくなっていた。 くっそ……! 油断した! 身動きがとれない俺に、ティナは得意げに言った。 「どう? 避けられなかったでしょう? カズが居ない間、私は詠唱速度を速める練習をしていたのよ」 なるほど。 自分の、苦手分野を克服する為の策を講じていたという訳か。 態度と乳ばかりがでかい女だと思っていたが、なかなか学のある殊勝な心掛けだ。 「ほぅ…… 大したものだな」 縛られていようと、俺は慌てない。 観念した体をひけらかし、相手の油断を誘う。 そんな俺に、ノエルは言った。 「カズ アンタは"王殺し"をしでかしたのよ? それに、ガルムの父親まで…… いかに正当防衛とはいえ、それは然るべき機関に報告する義務があるわ」 「然るべき機関?」 「カズ アンタを、査問会に連行する」 ん? あれ? 俺、捕まったの?
/805ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5125人が本棚に入れています
本棚に追加