相違

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すると、次の瞬間。 俺を拘束している光輪が、徐々に黒ずみ始めた。 は? 「な、なんだ!?」 戸惑う俺を余所に、そのどす黒いシミは一瞬の内に光輪の全体を覆った。 かと思ったのも束の間。 光輪はまるで俺の体内に飲まれていくかの様に、消え失せた。 な、何が起きたのか全く理解できないが……。 ただ一つ、確かな事がある。 俺は、解放された。 …………。 やったぜ。 その一部始終を見ていたノエル達も、驚きを露わにしていた。 「ちょ、ちょっとティナ!! 何をしているの!?」 ノエルは、ティナが"光輪の枷"を意図的に解除したものと思ったらしい。 しかし、責められたティナは。 「ち、違う!! 私は何もしてないわ!!」 ノエルの訴えを否定した。 まぁ、常識的に考えればティナの仕業な訳がないよな。 何はともあれ、不思議な事もあるものだ。 「ククク…… 残念だったな」 拘束が解かれ気が大きくなった俺は、先程の怨みを返す様に煽った。 「考えるのは後よ カズ!! アナタは逃がさない!!」 ティナはそう言って、再び俺に杖を向け様とした。 その時。 不思議な事は、まだ終わりではなかった。 「止めろ」 俺がそう言うと。 「きゃあ!!」 それは一瞬だった。 ティナの体に、光の輪が巻き付いている。 それは見間違え様もなく、ティナ自身が保有する魔術、"光輪の枷"だった。 ティナは自らの魔術で、拘束されていた。 理由はよく分からんが……。 何故だか俺には、そうなる事が分かっていた。 「テ、ティナ!? 何をしているの!?」 ノエルはティナの行動に、困惑していた。 そりゃ、そうだよな。 自分の魔術で、自分が捕まっているんだから。 「わ、私だって分からないわよ!!」 おー、おー。 慌てふためいているな。 その様子が滑稽に思えてきて、俺は笑いを堪えきれなかった。 「ククク……」 すると。 「待て、カズの様子がおかしい」 ガルムが俺を様子を指摘した。 「え?」 「まさか、これはカズが?」 ノエルとティナも、俺を見た。 が。 俺だって、この事態の理由はよく分からない。 分からないが……。 まぁ、俺だろうな。 あのどす黒いシミは、以前見た覚えがある。 俺は答えた。 「そうだよ これが、俺の魔術だ」
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