相違

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このまま、コイツ等と睨み合っていても埒があかない。 この均衡した状況から脱するには、どちらかが行動を起こす必要がある。 もたもたしていては、コイツ等が先にその行動を起こしかねない。 そうなってしまっては、銃を使うつもりのない俺は拘束されるだけ。 だからこそ、俺は先に動く必要があった。 それも、コイツ等からの追跡を逃れられる事ができる方法でだ。 そう思考した末に行き着いた俺の結論が、"透化"だった。 俺の命令に、リコは。 「"透化"ですか……? しかしマスター…… 皆様はマスターの事を想って、あそこまでしてくれていますので……」 "透化"の発動を躊躇していた。 あ? リコの奴、俺の命令に背くのか? リコまで何を言ってんだ。 勘弁してくれ。 「リコ…… 俺の言う事が聞けないのか?」 「………… いえ…… り、了解しました!」 少し戸惑っていたが、やはりリコの根本は機械だった。 持ち主に反抗するなど、もはや機械ではないからな。 そして。 リコは俺の命令を受け、"透化"を発動する。 「今度こそ さよならだ」 言いながら、俺はスゥと、姿を消した。 同時に、俺の視界も一時的に奪われたが。 まぁ、リコの地図照会があれば問題ない。 俺が消えた事に、3人は慌てていた。 「これは! カズがガルムとの決闘に使っていた"姿隠し"! 一体、どこに行ったの!?」 これはノエルの声だな。 よしよし、そのままうろたえていろ。 「ガルム! カズの居場所を匂いで特定できないの?」 今度はティナか。 なかなか利口な考えだが、残念だったな。 「くっ……! 駄目だ!! カズの野郎、体臭を"自然臭"で消してやがる!!」 そう。 ガルムの言う通りだ。 レイナから貰った香水は、有効に活用させてもらっている。 その辺は抜かりない。 ガルムとの決闘で学んだ事は、きちんと俺の身になっているぜ。 過去から学び、未来に活かす。 これが、人間というものだ。 さて……。 俺はリコに小声で、目的地までのルートの指示を仰いだ。 その目的地とは。 「リコ 地下水路までのルートを照会しろ」 "地下水路" これは、先程ラクターとの会話から聞き出した、ニルバニアから門を介せず壁外に出る為の通路。 "抜け道"だ。
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