相違

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リコの発言の意味が分からず、俺は尋ねてみた。 俺らしさってやつを。 「俺らしくない? どういう意味だ?」 「はい 普段のマスターは…… なんというか、やる気がない感じなんです いつも面倒臭そうにしているというか……」 は? なにそれ。 なんか俺、ディスられてる? 「えっと…… 俺って、そんな感じなの? なんか馬鹿にしてねぇか?」 「い、いえ! 決してそうではなく なんというか…… "やれやれ系"? みたいな感じです」 "やれやれ系"? おいおい、それは違うぞ。 「馬鹿お前 俺は超熱血だっつうの 賭けた馬とか、目を血走らせて応援するからな」 「それは熱血とは違う様な……」 「で? リコが言いたい事はなんだ?」 「は、はい 今のマスターは、以前とは打って変わってやる気に満ちている感じです 今まで見た事もないお姿ですよ」 ふむ……。 それがリコが俺に感じた違和感か。 つまりリコが言いたい事は。 「だから俺に大人しく無様に生き続けろと? あの化け物が造り上げた世界で、仇の庇護の下、哀れに生き続けろと? かつての同胞が殺され、ソイツ等の無念がこもった世界で俺だけ、のうのうと生き続けろと? そういう事か?」 俺の高圧的な確認にリコは。 「そ、それは……」 口を噤んだ。 俺は続ける。 「リコ それは無責任というやつだ その行為は同胞を侮辱しているのに等しい それとも、リコは俺をそんな非道な人間だと思っていたのか?」 「い、いえ そういう訳では!」 リコは慌てた様子で、俺の最後の確認を否定した。 「だったら、俺に従え 俺の復讐は正義だ」 「は、はい では、せめて私が命を賭してでも全力でマスターをお護りします!」 「おう」 まぁ、リコに命なんかないんだが。 「リコ お前が俺の変化を感じたのは間違いないだろう 人ってのはな、変われるんだよ」 俺はそう告げると。 「マスター…… 一つ、確認をいいですか?」 リコが神妙に聞いてきた。 「なんだ?」 「マスターのその変化 "良い方"の変化ですか? それとも……」 …………。 「馬鹿 俺をなんだと思ってる 良い方に決まっているだろ?」 俺はそれだけ言って、歩き続けた。
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