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俺の前方に表れたのは、ノエルだった。
闇雲に捜し回って、この地下水路に訪れたという感じでもない。
"案の定"などと言っていた事から、俺の居場所は確信を持って特定していたみたいだ。
「ストーカーだなんて、人聞きの悪い事言わないでよ」
そう言いながら近付いてくるノエルに、俺は尋ねる。
「言い得て妙だろ?
で?
何故、俺の居場所が分かった?」
するとノエルは。
「カズは、ラクターに会ったんでしょう?」
そう、確認してきた。
ん?
ラクターだと?
そういえばレイナの城で、ラクターに会った事はノエルに話したな。
「あぁ
それが?」
「その事を、ふと思い出したの
カズが、最初からニルバニアを出るつもりだったなら、ラクターに"抜け道"を聞き出しているんじゃないかと思ってね」
そうか。
ラクターはノエルにも、"抜け道"を教えていたんだったな。
見事な推理だ。
「ほぅ
良く見抜いたな
その通りだよ」
「やっぱり、そうなのね
ラクターの奴、あれだけ他言するなって言ったのに……
帰ったら、説教しなくちゃ」
「まぁ、ラクターを責めるなよ
俺が無理に聞き出したんだから
それより、他の連中はどうした?」
俺が尋ねた他の連中とは、ガルムとティナの事だ。
それを理解しているノエルは答えた。
「ガルムは、門を見張っているわ
ティナは、ギルドに応援を呼びに行っている
一応、その辺も疎かにする訳にはいかないからね」
「そうか」
って事は、ノエル1人か。
さて、どうするかな。
"透化"はしばらく使えないしな。
使えたとしても、この水浸しの場所では意味を成さない。
俺が"透化"していても、水の波紋で直ぐに居場所がばれてしまうだろう
まぁ、ノエル1人だけなら、どうとでもできるか。
俺は再び、拳銃で脅してみる。
「ノエル、
そこをどけ」
するとノエルは。
「絶対に嫌だ!」
今度は怯える様子がなく、強気だった。
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