相違

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"え?"じゃねぇよ。 とぼけやがって。 俺には、お前が考えている事くらいお見通しなんだよ。 俺は、それを問い詰めた。 「ノエルー そうやって、色目を使ったら 俺が言う事を聞くとでも思ったか?」 そう。 ノエルは、俺を好いてなどいない。 脈が無いのは、最初から分かっていた。 つまりノエルは偽りの告白をもって、俺を籠絡しようとしている。 確かに、"愛"というものは一番心に響くからな。 だが、バレバレだっつうの。 ノエルの思い通りになってたまるか。 俺の発言に、ノエルは 「ち、違う!!」 そう言って、首を横に振った。 目には涙を潤ませている。 ほぅ……。 大した演技力だ。 「ノエル 俺を騙そうとしても無駄だ だが、良い線いってたぜ? ちょっと、ときめいたからな 人を騙す為には手段を厭わない 実に人間らしい、ゲスなやり方だ」 「違う!! 私は本当にカズの事を――」 まだ、言うか。 俺は、ノエルの欺瞞に満ちた発言を遮った。 「だったら 俺と一緒に来いよ 一緒にニルヴァーナをぶっ殺そうぜ!」 俺はそう言って、拳銃を下ろすと、手をノエルに差し伸べた。 「な、なんでそうなるのよ! カズの分からず屋!」 あ? 分かってないのはどっちだ。 「それが"愛"というものだからだ 俺の事が好きなら、俺を肯定しろ」 「違う違う!! カズは絶対に間違ってる!! そんなのは、愛なんかじゃない!!」 まぁ、これも見解の相違というやつだな 「そうかよ だったら、ノエルの俺に対する気持ちも愛じゃねぇって訳だ」 「違う……グスン…… 私は…… 本当にカズの事が……」 あーあー。 泣き出しちゃったよ。 ここまでくると名優だな。 ノエルは泣きながら続ける。 「カズが居なくなったこの4日間 私は恐くて恐くて、たまらなかった カズの身が心配で、気が気じゃなかった だから、帰ってきた時は本当に嬉しかったし、もう二度と離れたくないと思った なのに、どうしてカズは分かってくれないのよ!」 …………。 うぁ……。 話が重い。 重いっていうか……。 むしろ、うぜぇ。
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