相違

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しかし、参ったな。 ノエルの奴、俺が拳銃を使う気がない事を見抜いてやがる。 もう、脅しは通用しないか。 かと言って、マジに拳銃を使う訳にはいかない。 下手に反撃できない俺からすれば、ノエルは自分自身を人質にして攻めてきている様なものだ。 「その短剣で、どうするつもりだ?」 俺はノエルの意志を確かめた。 するとノエルは。 「安心して 殺したりなんかしないわ ただ、動けない程度に損傷を与えるだけよ」 ひぇ。 どうやら、本気みたいだ。 その時。 「マ、マスター……」 リコが心配そうに、呼び掛けた。 そうか。 俺にはリコが居たな。 ここは、リコの電気ショックで……。 いや、足下は水浸しだ。 ノエルを無効化まで追い込む電撃を放ったところで、俺まで感電してしまう。 仕方ない。 「大丈夫 心配無用だ」 俺はリコを下がらせ、1人でなんとかする事にした。 女の扱う剣捌きなど、容易に去なす事ができるだろう。 俺がそんな慢心を抱いていた時。 ノエルは行動を開始した。 「ここには、水がある 私にとって、地の利があるわ」 「何?」 ノエルの発言に疑問符を浮かべていると。 ノエルは短剣を水に浸けた。 そして、続ける。 「"付与魔法"『氷の武器』」 言って、短剣を水から抜く。 すると、短剣の刃は氷の膜に覆われ、そこを滴り落ちる水滴が、まるで氷柱(つらら)の様に凍っていく。 見ると、刃は伸びて、もはや"短剣"ではなく"太刀"と化していた。 リーチを伸ばしたのか。 だが、所詮は氷。 あんなものへし折ってやる。 まぁ、一応リアクションはとっといてやるか。 「ほぅ 大したものだ」 するとノエルは。 「感心するのは、まだ早いんじゃない?」 「は?」 なんか、強気なんだけど。 と、思った時。 パキパキ、と音が聞こえてきた。 ん? どうやら、ノエルの持つ太刀から聞こえているみたいだが……。 「なんの音だ?」 俺が尋ねるとノエルは、説明をしてくれた。 「カズ "氷"の性質って知ってる?」
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