相違

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氷の性質? そんなもん、"冷たい"って認識しかねぇよ。 「どういう事だ?」 俺が尋ねると。 「カズはさ "氷"と"鉄" どっちが硬いと思う?」 ノエルはそんな事を聞いてきた。 は? 愚問だな。 その答えは、"氷"と"鉄"の双方をぶつけた場合を考えれば、容易に分かる事だ。 俺は自信満々に答えた。 「そんなもの"鉄"に決まっているだろ」 俺のその答えに、ノエルは。 「フッ」 と、嘲笑った。 あ? なんか、イラッとくる反応だな。 「なんだよ」 「うん 確かに、鉄で氷を砕く事はできるけど、その逆はできない」 ノエルはそう説明した。 俺の答え、合ってるじゃねぇか。 なんて、思った時。 ノエルは続ける。 「それが、一般的な考えよね」 「なに?」 「氷が割れてしまうのは、内部に含まれる埃や気泡といった不純物が原因なの 不純物が干渉している僅かな隙間から、亀裂が発生して砕けてしまうのよ」 「何が言いたい?」 「つまり、その不純物を取り除けば、氷はなによりも硬い物質になるの その硬度は"超硬石"に匹敵するんだから」 この世界における"超硬石"なる物質が、どんなものか知らないが……。 所詮は氷だろ? いくら、"氷"の硬度が上がろうが それが、"鉄"の硬度を上回るとは思えない。 「って事は、今ノエルがやっている事が……」 「そう 今まさに、氷内部の不純物を摘出しているの」 なるほど。 その氷の太刀がパキパキと音を鳴らしていたのは、その工程故か。 無駄な事を。 しばらくして。 「よし! こんなもんかな!」 言ってノエルは、氷の太刀を振るった。 やっと、準備終了か? やれやれ。 「じゃあ、その氷の太刀と一緒に、ノエルの心もへし折ってやるよ」 俺は挑発し、臨戦態勢を整えた。 その時。 「マスター…… 気を付けて下さい」 リコがマジな感じで、忠告してきた。
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