相違

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「は? なにがだよ?」 俺はリコに、忠告してきた理由を尋ねた。 するとリコは、赤いレーザー状の光を照射して、ノエルの持つ氷の太刀を"見て"いた。 どうやら、分析しているみたいだな。 って事は、その結果から得られた情報を、よっぽど危険視しているのか。 リコは俺の疑問に答えてくれた。 「ノエルさんが言っている事は本当です あの氷の太刀は、凄まじい硬度を持っています」 「凄まじい硬度って…… 所詮は氷だろ?」 「いえ、だからこそなんです」 「何?」 「純粋な氷本来の結合強度 それは、鉄の硬度を遥かに凌駕しているんです」 「つまり、分かり易く言うと?」 するとリコは、驚愕的な事実を述べた。 「凡そ…… "鋼の3倍"に匹敵します」 は? はぁ!? 待て待て! そんなに硬いのか!? やべぇ……。 ナメてたわ。 へし折るとか、絶対に無理じゃねぇか。 いや待て。 不純物から亀裂が発生するのであれば、媒体にしている短剣そのものが不純物に成り得ないのか? と、思った時。 ノエルは、まるで俺の思考を読んでいたかの様に説明を始めた。 「私の短剣はね 水の性質を含む"水晶石"の元となる"水鉱石"で造られてあるの だから、氷とこの短剣は相性が良くてね 氷が短剣との境から外れる事はないのよ」 …………。 さいですか。 あまりの事に俺が臆していると、次はリコが続けた。 「硬度だけではありません 刀身が氷で常に濡れている為、血や油などの付着によって低下する切れ味を、常に最高の状態に維持する事ができるみたいです」 うぇ。 マジか。 武器としても、理に適った構造という訳か。 リコの説明を聞き、俺は自分が取るべき最善の行動を考え直した。 そんな時。 ノエルは、俺の様子に気付いたらしく、自らの事を語り出した。 「やっと分かったみたいね いいカズ 覚えておきなさい」 「何を?」 「膨大な魔力量をいたずらに発揮するだけの叡人とは違って、魔力の少ない人間にはね、闘い方を工夫する必要があるの」 「…………」 「魔力を少し操作して、この氷から不純物を取り出せればこんな事もできるのよ まぁ、人間の方が細かい操作とかは得意だからね」 「だから?」 「弱いからこそ考えて、弱点を把握して、それを乗り越える創意工夫を諦めない こういう事を "人間らしい"って言うのよ」
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