相違

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ふむ……。 まぁ、ノエルの言った事も理解できる。 できるが……。 問題なのは、それが"良い事"なのかと言う事だ。 ノエルは良い事の様に思っているみたいだが。 俺は、そうは思い切れない。 人間は確かに弱い。 脆弱な体に、鋭い爪も、強靭な牙も持っていない。 なのに、人間は世界の頂点に君臨している。 それは人間が創意工夫をし過ぎたからだ。 以前、ミリアが言っていた。 弱い事と強い事は対局ではなく、全く別のものなのだと。 そういう意味では、ノエルの言う"人間らしい"定義に当てはまる。 が、その結果。 人間はニルヴァーナによって滅ぼされた。 いずれにせよ"人間らしい"事は、良い事ではないのかも知れない。 そんな思いから、俺はノエルに忠告しておく。 「"人間らしさ"を良く理解してるみたいだな だが、気を付けろよ?」 「何を?」 「その考えを極めすぎた故に、かつての人間は滅んだ くれぐれも、同じ道を歩まない様にな」 「え……」 よし。 良い感じにビビってくれた。 「じゃあ、話は済んだから 俺は行くわ」 俺は話の流れで、どさくさにその場を去ろうとした。 だが。 「ちょっと、ちょっと!! 何、しれっと行こうとしてるのよ! 待ちなさい!」 チッ……。 見逃してくれないか。 仕方ない。 その氷の太刀が、どれ程の代物かは理解出来たが。 それが魔力によって造られた物ならば、俺にも対抗できる手段がある。 この俺の"人間らしい"力。 "闇術"でな。
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