相違

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まだ、よく"闇術"の使い方は分からない。 だが。 なんとなくではあるが、感覚的には理解していた。 自分の体を動かしているみたいな感覚。 説明は出来ないが何故か俺は、"闇術"の扱い方を習得しつつあった。 闇術は、人間の業が魔術として体現された術みたいだ。 先程は、ティナの"光輪の枷"を略奪する事が出来た。 恐らく闇術には、魔力という概念を押し殺す性質があるのかも知れない。 きっと、ノエルの氷の太刀も無に帰す事ができるだろう。 氷の結合を成しているノエルの魔力を奪う事ができれば、氷の太刀は単なる水に戻る筈だ。 俺はそう考えて拳銃をしまい、素手で挑む。 すると、ノエルは。 「何か妙な事を企んでいるみたいね」 俺の思惑を察していた。 「気にするな ノエル如きに、武器を使うまでもねぇ」 俺は更に挑発するとノエルは。 「フン! 言ってくれるわね! 後悔するわよ!」 なんか怒り気味で、氷の太刀を構えると走って向かってきた。 相変わらず、煽り耐性の低いやつだ。 ノエルは続ける。 「腕の一本ぐらい覚悟する事ね! でも、安心して 後で高練度の医術師に頼んで、元通りに治してもらうわ だから、痛いのは今だけよ!」 「そいつはどうも」 そう返事をした時。 既にノエルは俺に迫っていた。 氷の太刀を俺の右腕目掛けて、振り下ろしている。 が。 俺も抜かりない。 右手のひらに意識を集中させ、念じてみた。 すると、どす黒い煙がどこからともかく現れた。 おぉ……。 なんか格好いい。 うまくいったぜ。 後はコレを、氷の太刀にぶつけるだけだ。 俺は、迫りくる氷の太刀に合わせて、右手のひらを突き出した。 突きだしてみたものの……。 なにこれ。 超怖ぇ! やっぱ無理! そもそも太刀を素手で触りに行く事自体、おかしい。 俺は、あわや氷の太刀が俺の手のひらに当たる、すんでのところで避けてしまった。 俺のへたれ! どうやら、この逃げ癖は一生治る事はないみたいだ。
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