相違

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え? なにそれ? 俺は何もやってねぇぞ? 変な言いがかりは止めてくれ。 と、言いたいところだが……。 ノエルの負っている傷と、 俺の負っている傷が酷似しているのは、恐らく意味がある。 更に言えば、俺の展開させた、どす黒い煙の位置。 その右手のひらに負った傷という事と、無関係ではないだろう。 単純に考えると。 これは、"闇術"なのか? "略奪"とは違う闇術が発動したと考えるのが妥当なところか。 まぁ、自分のダメージを相手にも与えるなんて、人間らしいと言えば人間らしい術だといえる。 だが、使いどころが無さ過ぎはしねぇか? 俺が攻撃を食らわなければ、相手にも与えられないんだろ? 極端な話、さっきの攻撃で俺が死んだら、ノエルも死ぬって事じゃねぇか。 誰も救われねぇな。 これが、"闇術"か。 そうだな。 この闇術に名前を付けるとしたら……。 「まぁな "闇術"『因果応報』 俺に触れると怪我するぜ?」 俺は考察の末、ノエルの問い掛けにそう答えた。 ちょっとキザな台詞とか、言ってみたかったし。 するとノエルは。 「ふざけた魔術ね! カズを止められるなら、それでも構わない!!」 忠告を無視して、三度突っ込んで来た。 "因果応報"の数少ない使い道である、"脅し"が通用しないとは。 ノエルの奴、どこまで本気なんだ。 だがまぁ、来てくれるなら願ったり叶ったりだ。 華麗にカウンターを決めてやろう。 「馬鹿が! 兵士の俺に適うと思うなよ!」 「馬鹿はどっちよ! この大馬鹿!!」 ノエルの目は涙に潤んでいる。 ククク……。 その涙に騙される俺ではない。 容赦はしねぇぞ。
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