相違

95/105
前へ
/805ページ
次へ
ノエルが、やたら長い魔術名を叫んだ瞬間。 見ると、ノエルの足元には、なにやら魔法陣の様な紋様が展開されていた。 その紋様の形は、見た事がある。 "雪の結晶"――別名"六花"だった。 六花の形を成した魔法陣は、ノエルの突き立てた杖を中心に展開されていた。 でだ。 だから、どうした? それが、すごいのかどうなのか俺にはよく分からん。 「それが、ノエルの持つ最高位の魔術なのか?」 俺が尋ねると。 「そうよ "魔雪氷界陣"には、全部で6つの"舞"があるの それが "六花(りっか)の舞" "天花(てんげ)の舞" "風花(かざはな)の舞" "三つの花(みつのはな)の舞" "霜花(しもはな)の舞" "木花(きばな)の舞" その全ての舞を展開した術の総称は"白魔(はくま)"と言ってね 使ったら最後、使用者は体温が下がり、死ぬと言われているわ」 長々と説明、ご苦労。 って、待てよ。 じゃあ、つまり……。 「ノエル…… お前、死ぬつもりなのか?」 俺の心配に、ノエルは答えた。 「いいえ 今の私は、せいぜい"六花の舞"を行使するのが精一杯だから、この術で死ぬ事はないわ」 なんだよ。 焦らせやがって。 流石に、死なれたら目覚めが悪いからな。 「そうか そいつはなによりだ」 「あら? 私を心配してくれているの? でも、自分の心配をした方が懸命よ?」 「なに?」 と、その時。 ふと、俺の目前に何かが降ってきた。 それがなんなのかは、直ぐに分かった。 分かったが……。 理由が不明だ。 何故、地下水路にこんなものが? 疑問に思いながら、辺りを見渡して見たところ。 "それ"は、そこかしこで降っていた。 俺が見た白い小さな物質。 それは、"雪"だった。
/805ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5125人が本棚に入れています
本棚に追加