相違

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見ると、雪はノエルの周辺を舞っていた。 察するに、この雪はノエルの魔術によってもたらされたものらしい。 気になったのは、ノエルの台詞だ。 "自分の心配をしろ"だと? おいおい、こんな雪のどこに危険な要素があるんだ? と、思った時。 雪の一粒が、水面に落ちるのを見た。 すると、その一面が瞬時に凍りついた。 凍りついた面積は、割とある。 「な……!?」 その様子に、俺が驚いていると。 「だから言ったでしょう? この雪は、私の魔力が外気と反応する事で造られた特別の雪なの 触れた物をとことん凍り尽くす 魔術の及んだ周辺は、一面が氷の世界と見紛う事から "魔雪氷界陣"と呼んでいるの」 術名にも理由があったのね。 まぁ、それはいいとして……。 確かにこの魔術は厄介だ。 無数に舞い散る雪の、その一粒でも触れてしまうと途端に凍りついてしまう。 ノエルのよく使う"氷の飛沫"の上位互換みたいな感じか? いや、奥義と言っていた程だ。 まだ、何か隠された効果があるのかも知れない。 いずれにせよ、俺はこの雪に触れる事なく、ノエルの向こう側に行かなければならない。 ノエルの奴、面倒な場所に陣取りやがって……。 道を塞いでんじゃねぇよ。 ガキの頃の話だ。 冬の登下校の時。 いかに、雪に触れない様に進めるか……なんて遊びをした事がある。 勿論、舞い散る雪を片っ端から避ける事なんて不可能だった。 だが……。 今は、その不可能をなんとか可能にしなければならない。 でないと、俺は凍りついてしまう。 やってやる!! 「確かにすげぇ魔術だ だがな、当たらなければどうという事はない!」 意気込み、俺は歩を進めた。 その直後。 雪の一粒が、俺の右手に当たった。 あ……。 やっべ。
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